2013年4月20日土曜日

「物を見つめる」

先日、画家熊谷守一さんの事が書かれた本を読みました。
1880~1977年97歳で亡くなられましたので、既に亡くなられてから36年も
経っているんですね。時々拝見するとみずみずしい作品ですので、
そんなに経っていると思いませんでした・・・

明治13年経済的には恵まれた家に生まれましたが、家庭的にはとても複雑で、
屈折した少年時代を過ごされたそうです。
美大に進学され才能もあり、画家として華やかな未来を約束されていましたが、
それもなげうって故郷に引っ込んでしまい、貧乏のどん底で生活をされました。
その後、友人に促せれて上京し、画家としての生活を再開され、晩年にかけて広く
画壇に名前が知られるようになり、私達も作品を見る機会もふえてきました。
 
写真等で拝見すると、その風貌や生活から「現代の仙人」と言われたように、
晩年の30年間は全く外出しないで、都内の敷地50坪の家と15坪の庭が世界の全てとなり、
その小さな世界に息づく小さなアリやヒキガエル、ネズミや色々の草花と共に過ごされ、
一切の世俗的なものに背を向けて暮らされました。
晩年「これ以上人が来ては困る」と言い、文化勲章の内示も辞退されたそうです。
(アーアー・・)

本にも書いてありましたが、熊谷さんは「アリは動き始める時、まずどの足から動くか?」と
いう事に興味をもち、庭にしゃがみこんで見る、地面に顔をすりつけて見る、
科学者の目でなく友達付き合いの目でアリを見る。
その観察によると、アリは左側の2本目の足から動かすそうです。
「あらゆるものを見て、見て、更にその上に見て、そうした見ている毎日の生活が、
デッサンの確かさにつながっている」と書いてありました。
そうした日常の観察が、一本の線と面に凝縮された作品になり、
私達見る者に優しさや静けさが伝わってくるんでしょうね。

又、熊谷さん自身も言って見えました。
「私は誰が相手にしてくれなくても、石ころ一つとでも暮らせます。
石ころをじっとながめているだけで、何日も何ヶ月も暮らせます。監獄に入って
いちばん楽々と生きていける人間は、広い世の中でこの私かもしれません」・・・
やっぱり、本当の仙人だったようです。 
 
何かを創作するという事は、じっくり物を見つめて、物を記憶する事が大切なんですね。


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